野球部
しゅんは中学に入り野球部に入部した
全校生徒も少なく
卓球部か野球部の二択だった
幼いころから仲良しの友達も一緒に入部
部員は10人となった
それはそれは楽しく
キツイ練習も皆んなと一緒だから頑張れてるに違いない
そんな駿が
中1のころ たった一人だけ補欠になってしまった
公式の試合の数日前に学校から渡された背番号
塾の帰り道、車のなかで
「お母さん、背番号10番だった…。」ポソっと言った
正直言われたとき
悔しかったし情けない気持ちだった
「なんでみんなと同じことしているのに一人だけ補欠なの?」「実力の差だね」とひどい言葉を駿に言ってしまった
駿は…黙っていた
駿が一番落ち込んでいるのに傷口に塩を塗りたくってしまった
言ってしまったことは取り戻せなくて
そのあとすごく後悔して
帰宅してしばらくしてから部屋へ行き ごめんと伝えた
他の子と比べても仕方ないし駿は駿なのだからと自分に言い聞かせたけど
試合を見にいくたんび
一人だけ試合にださせてもらえない駿が不憫におもい仕方なかった
入部とともに駿を撮るために始めたカメラも
試合にでる他の子で埋まっていくのが少し悲しかった
同じ学年の子たちが試合に慣れてヒットを打ったりしてても心から拍手をできない自分もいたし、置いていかれたような気がしていて自分の気持ちが駿や他のお母さんに伝わらないようにしていた
そんななか
はじめた毎朝のルーティン
駿は朝起きると
お父さんと庭でトスバッティングをはじめた
夏も秋も冬もつづけ
陽がのぼる前の暗い日もあったし雨の日は下屋で素振りをしたり
ボールが金属バットにあたる音があたらしい朝に響き渡っていた
すべてはレギュラーになるため。…そう思っていた
それでも試合に行けば出れる日もあれば一人だけ補欠の日もある
モヤモヤを抱えたまま
春がきた
顧問の先生が
新しく赴任された野球経験のある先生に変わった
ひとつ上の先輩が引退をし、駿たちが主軸になる番
補欠だった駿は
あたらしく赴任された顧問の先生により部長に選ばれた
誰が部長に相応しいか
6人が一週間ずつ交代で部長をつとめ そして決定した
はじめ駿から聞いたときは
???が頭のなかいっぱい
だって今まで補欠だったよ?
他にもいい子いるよ?
エースの子が生徒会だから配慮があって駿になったのかもしれないが
そんなのどうでもよかった
ずっと毎朝頑張ってきた駿をみてきたから
すごく報われた気がして
すごくすごく
嬉しかった